謎の奥さんが割引してくれた。
本日金曜日夕方の話である。
私はスーパーにいた。
今日の夕飯を何にしようか考えながらさまよっていると、どこからか歌が聞こえてきた。
お肉すきすき♪
お腹すきすぎ♪
楽しそうな歌声が聞こえてくる。
こう言う風に単純な歌を繰り返し、頭の中に刷り込んでお客にお肉を購入させると言う戦略だろう。
お肉すきすき♪
お腹すきすぎ♪
ふぁっ。ばかな。あさはかな戦略だ!私をパブロフの犬か何かとでも?
これまで数たるベテランの営業トークに対してめんどくさくなってくると、「そのようなご用件は承っておりません」 一筋で返してきたこの私にこんな単純な呪文のようなう歌にひれ伏すとでも?
そんな良くわからない意味不明のことを思いながら、お肉コーナーを過ぎてヨーグルトコーナーへ向かった。
ヨーグルトを見ながらどれがいいか選ぼうとしていると、
ふと頭の中に
お肉すきすき♪
お腹すきすぎ♪
と流れてくる。
この韻を踏みつつかつ軽快なちょっと無理したおばさまの歌声が私の心をくすぐりはじめた。
いやいや、ここヨーグルトコーナーだから、なんなら今ブルガリアだから
お肉すきすき♪
お腹すきすぎ♪
頭の中にパンチラインが離れない。
気づくと私の手はしゃぶしゃぶ肉を手に取っていた。
私は完全にひれ伏した。
今夜はしゃぶしゃぶに決めた。
しゃぶしゃぶと決めたらあとは早い。適当でいいやーと思いながら、
えのきと白菜としゃぶしゃぶのゴマだれを手に取り、レジへ向かった。
レジは3つありなるべく一番はやく流れるレーンに向かった。
私の前には2人いる。
私が並びながら、ケータイでちょこまかニュースを読んでいたら、目の前にいた目の奥に優しさを抱えている奥さんが後ろをむいて私の方を見てきた。
目が合ってしまったので、わたしはなんとなく軽く会釈するような感じでふとケータイへ目を戻した。
その瞬間
目の前に並んでいた奥様が何か話しかけてきた。
「それ、ひゃくえんどう?」
私はいきなり話しかけられて、一瞬わけがわからなかった。
しかもひゃくえんどうって何?職場の遠藤さん?100人の遠藤さん?(小太りのヒゲもじゃおじさん)それともエンドウ豆のこと?でもエンドウ豆買ってないし。。。と頭の中で100人の遠藤さんがエンドウ豆を持っている姿を想像して言葉の意味を反芻しながら、
私が「はい?」(ちょっと大きな声)というと、いきなり私のカゴの中にある商品に謎のシールを貼り出した。
私はこの奥さんのガンガンくる突然の行動に意味が不明になった。
この人は一体何をしているのだろうと思いながらみていると、20円引きと書かれたシールを張っているではないか。
「これなんですか?」
と私が問いかけるとこれつけると
「全部20円びきになるのよお。おほほほほ」
と言いながら私のカゴに入っていた全ての商品に張っていった。
私は割引されるならいいかーと思いながら「ありがとうございます」といいレジを待った。
レジに行くと無事に割引された。
なんだか得した気分になり、袋に商品を入れながら、帰り間際に謎の奥さんにもう一度「ありがとうございます」と言って店を出た。
謎の奥さんは「有効利用♪、有効利用♪」と言っていた。
ふと家に帰ってしゃぶしゃぶをに貼られた20円引きのシールをみて、全ての疑問が解けた。
ひゃくえんどうは100円以上って言っていたんだと。
100円以上の商品は20円割引になると言う意味だったのだと。
今日までの割引だから「有効利用♪、有効利用♪」と言っていたのだと。
完